森口博子「夢の合鍵」

この歌をラジオではじめて聞いたときは、森口博子は既にブレイク寸前だった。ただ、実は歌手であることを知られていなくて、この歌も世間の認知度は低かったはずだ。
私はこの歌ではじめて森口博子という歌手がいてこんな歌を歌っていることを知ったのだった。そしてその後の「Eternal Wind」のヒット以来歌手としても活躍してきたことは、みなさんご存じのとおりである。

さてこの歌、「幸せな振りで暮らしている」「夢見る気持ちを忘れた自分」が「少年のように胸を躍らせ」たいと願い、「遠い記憶が」「夢の手がかり」であって、「砕け散った夢」を「取り戻そう」と考えることで「扉を開ける鍵を見つけた」...という中身である。
はじめて聞いたのは私が15歳のときだったはずで、そのときはたしか彼女の歌声にひかれたのだった。そして今は正直に言って『若いのにようこんな歌歌っとったなあ』というところだ。この当時森口博子は21歳。こんな心境に、彼女がなったことがあったのだろうか。

私は田舎育ちな上に一人で過ごす時間が長かったためか、今でものほほーんとしているところがある。そんな私が大きな挫折感を味わったのは大学に通うようになって、進路の選択を迫られたときがはじめてだった。既に大学4回のときから「自分はもう勉学は無理かもしれん」とうすうす感じていて、それでもどうにかお情けで修士課程まで置いてもらうことができたが、いよいよ「就職しかない」という状態に追い込まれたとき、そのことにまっすぐ目を向けることができなかった。だから就職活動にも身が入らなかったし、極端にいえば何の考えもなく就職してしまったのだった。
で、そんなことではせっかく採ってくれた会社に申し訳ないので「せっかく就職したのだからとりあえず5年は辞めないでガマンしよう」と心に決めて仕事に就いたのだ。だから就職後3年して、会社の事情で部署を大きく変わらなければならなかったときには仕事に打ち込めず、挫けそうになってしまった。その後の転勤では土地にはこだわらないので(どうせ独身だし)特段の思いはなかったが、今でもあの気持ちはどこかにひきずっていると思う。
だから、ときどきこの歌を聴いて、星を見たりして、失った夢を取り戻すところまではいかなくても夢を思い出すことは、そこで止まってはいけないのだが悪くはないだろう。夢のかけらだけでも取り戻すことが、今の私には必要なのだろうけど。(2004.3.28記)

「夢の合鍵」歌: 森口博子
作詞: 安藤芳彦
作曲: 中島文明
編曲: 加藤みちあき

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