ふきのとう「鈍色の空」

ふきのとうは、山木康世と細坪基佳の男性デュオとして知られているグループである。「白い冬」「春雷」「風来坊」「やさしさとして想い出として」などがヒット曲として知られている。
恥ずかしながら、私は「ふきのとう」の存在を、解散してから知った。「風来坊」は聞き覚えがあったが、それを歌っているのが「ふきのとう」で、しかも大学1回の年まで現役として活動していることを、残念ながら知らなかったのである。知ったのは社会人1年目の夏、きっかけはラジオでの細坪さんのイベント告知だった。入社1年目だったのに、たしか予定とあわず、イベントへは行けなかったことを覚えている。また、細坪さんのラジオ番組も、日曜深夜ということもあって聴くことができなかった。
ただ、山木さんも細坪さんも現役で活動中なので、誰かと違って(!?)まだチャンスはある。

細坪さんの声と歌唱力には、本当にしびれる。「春雷」を目当てにはじめて買ったアルバム「人生・春・横断」を聴いて、たちまちにしてはまってしまった。
この「鈍色の空」は「金色の森・銀色の風」というアルバムに収められている。作詞・作曲とも細坪基佳。

このページをお読みの方は、もしかしたら「鈍色」という色のことを、よくご存じないかもしれない。もはや、日々使う言葉ではないかもしれない。と心配したのは私がそうだったからに他ならない。いやはや、母語も使えなくなってしまうのである。

鈍色
昔、喪服に使った濃いねずみ色 (新明解国語辞典、第四版)
ということがわかれば、タイトル「鈍色の空」というのがどういう空なのか、よく理解できる。
そのとおりで、この歌は車に乗り込んだ自分が、まだ「SIDE SEATに微かに君の移り香」を感じることができるのに、「見知らぬ誰かの愛に 駆けていく」「君」には、「声はもう届かない」し、「心から抱きしめることもない」。そんな中で、「鈍色の空」から「孤独(=雨、筆者注)が落ちていく」。自分は「ただあてもなくHANDLE 握りしめて」、「君の瞳恋しくて」「悲しみを乗せて」車を走らせていくしかない、そのうちにも「雨は弾みをつけながら 窓を叩」いていく、という歌である。
やはり、この歌詞からも、景色がみえるのである。
そういう、風景を歌いながら、しかしどうしようもない悲しみを歌う歌手が、やはり好きなのだ。 (2002.9.30記)

「鈍色の空」歌: ふきのとう
作詞・作曲: 細坪基佳
編曲: 瀬尾一三
アルバム「金色の森・銀色の風」収

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